不動産売却の金額はどう決める?納得できる価格設定の流れをご紹介

不動産の売却を検討するとき、「売り出し価格をいくらに設定すればよいのか」と迷う方が多いのではないでしょうか。価格の決め方によって、売却期間や最終的な利益が大きく変わります。本記事では、相場や公的指標、ローン残債の確認方法、賢い価格設定のコツまで、誰でも実践できる不動産売却の金額の決め方をわかりやすく解説します。ご自宅の売却で失敗しないための第一歩として、ぜひご参考になさってください。

相場と公的指標を押さえて価格の基礎を理解する

不動産を売却する際には、まず「相場」として活用できる公的指標を知ることが重要です。国土交通省が毎年3月に公表する「公示地価」は、標準的な地点における正常な価格として、土地価格の基準となります。また、都道府県が毎年9月に公表する「基準地価」は、公示地価が対象外とする都市計画区域外も含めた地域の価格を示しており、市場全体の動向を補完する役割があります 。さらに、「相続税路線価」「固定資産税評価額」といった税務評価指標も活用できますが、これらはそれぞれ公示地価の約80%、70%を目安として設定されており、適正価格推定の参考として用いられます 。

実際の売買価格である「実勢価格」を知るには、これらの公的指標に係数をかけて見積もる方法があります。たとえば、公示地価に対して1.1~1.2倍程度が実勢価格の目安とされることが多く、実際の成約に近い価格帯を予測できます 。

以下に主要な地価指標とその意味を整理した表を示します。

指標内容目安・特性
公示地価国が標準地点の正常価格を鑑定市場価格の目安、公的基準
基準地価都道府県が鑑定評価、都市計画区域外も含む地域の実情をより反映
実勢価格売主・買主間で成立した価格現実の取引価格に最も近い

これらの指標をあわせて活用することで、売り出し価格設定の土台をしっかり築くことができます。

ローン残債や諸費用を確認して最低売却価格を設定する

不動産を売り出す前に、まずは住宅ローンの残債や売却にかかる諸費用を把握し、これを下限とする「最低売却価格」を明確にする必要があります。

住宅ローンが残っている場合、売却代金で完済できなければ、抵当権を抹消できず売却自体が成立しません。ローンの残債はご自身が契約した金融機関にてご確認いただくことが肝心です。

次に、売出し価格を決める際におおまかに把握しておきたい主な諸費用を、以下の表にまとめました。

費用項目目安金額
仲介手数料売却価格×3%+6万円(+消費税)
抵当権抹消登記費用登録免許税:不動産1件につき約1,000円+司法書士報酬約1~3万円
住宅ローン繰上返済手数料1万~5万円程度

仲介手数料は法律で上限が定められており、一般的には売却額が400万円を超える場合、「売却価格×3%+6万円」に消費税を加えた金額が見込まれます(目安として)。また、抵当権抹消には登録免許税や司法書士への報酬もかかり、合計で数万円の負担となります。住宅ローンの繰上返済にも金融機関ごとに事務手数料が発生し、数千円から数万円が相場です。

なお、住宅ローン残高と諸費用を合算し、それが売却予定価格を上回る場合は「オーバーローン」の状態となります。一方、売却価格がそれらより上回っていれば「アンダーローン」となり、売却後に収支が見込めると判断できます。オーバーローンの場合は、自己資金での補填やプランの見直しが必要になることもあります。

このように、住宅ローン残債と必要な諸費用を正確に把握した上で、最低限これだけは確保したい価格を基準に売出し価格の下限を設定すると安心です。そのうえで市場相場や査定結果と照らし合わせ、売却価格のバランスを調整していくことをおすすめします。

査定を活用して上限と下限を明確に定める

複数の査定に頼らずにうまく活用するには、まずインターネットの一括査定サービスを上手に使うのが効果的です。一括査定では、所在地・面積・築年数などの物件情報を入力するだけで、複数の不動産会社に査定依頼が可能です。机上査定だけでなく、訪問査定にも対応している不動産会社を選ぶと、価格の根拠や担当者の対応も比較しやすくなります(例:査定手法の違いや根拠の提示は重要)です。

査定結果をもとに、「希望売却価格」と「最低売却価格(残債や諸費用をクリアできる額)」を整理すると、現実的な価格幅が見えてきます。査定額はあくまでも「おおむね3か月以内に売れるであろう価格」の目安であり、売り出し価格や成約価格とは異なる点を理解しておくことが大切です。

具体的に判断しやすくするため、下記のように簡易な表を使うと整理しやすいです。

分類 意味 活用ポイント
上限(希望価格) 査定結果の上位価格帯 根拠のある価格か、担当者の説明を確認する
下限(最低価格) ローン残債・諸費用を考慮した最低ライン 費用を回収できる価格かどうかを確認する
価格幅 上限と下限の差 売却戦略に応じて調整する

売主が主体となって納得できる価格設定を行うためには、査定結果の価格だけでなくその根拠の説明の有無や、担当者とのコミュニケーションも判断の軸になります。査定額が高ければよいとは限らず、その根拠がしっかりしているかどうかを重視しましょう。誤解のない納得できる売却価格の設定につながります。



戦略的な売り出し価格設定と適切な調整のタイミング

売り出し価格は、最初に「高すぎず安すぎず」の適正ラインを見極めて設定することが大切です。端数価格(たとえば「3000万円」ではなく「2980万円」など)を活用すると、買い手にとって心理的に魅力的に映りやすく、問い合わせが増える傾向にあります。適正価格を外すと、内覧すらされないこともありますので、初期価格の設定は慎重に行います。また、価格はあとから下げることはできますが、あげるのは困難なため、慎重な初期判断が重要です。

売却活動では、売り出し開始から3か月前後をひとつの目安にしておくとよいでしょう。この時期は売却活動の「山場」であり、買い手からの反応を見ながら柔軟に価格を見直すことで、売却機会を最大化できます。3か月経過しても反応が少ない場合は、価格調整を検討し、市場の動向に応じて戦略的に対応してください。

売却の目的によって戦略も変わります。早く売りたい場合は、一般媒介契約を活用して複数の仲介業者に依頼することで、競争的な動きが期待できます。また、春(1〜3月)や秋(9〜10月)のような購入意欲が高まる季節を狙って売り出すと、価格を維持しながら売却しやすくなります。

以下の表は、目的に応じた戦略を整理したものです。

目的 戦略のポイント 期待できる効果
短期間での売却 一般媒介で複数業者に依頼し、適正価格で早期展開 競争により買い手との出会いが早まる
高値でじっくり売却 チャレンジ価格を設定し、市場反応をみながら段階的に価格を調整 時間に余裕がある場合に有効な戦略
購入需要の高い時期に売却 春や秋の活発期に向けて販売開始のタイミングを調整 買い手心理のピークを捉えて、条件良く売れやすい

まとめ

不動産を売却する際の金額の決め方は、多くの方にとって大きな悩みのひとつです。まずは公的な指標や過去の取引事例から市場価格を把握し、住宅ローンの残債や諸費用も踏まえて最低価格をしっかり設定することが重要です。そのうえで査定結果を参考に売り出し価格の幅を決め、希望に沿った価格戦略を立てることで、納得のいく売却へと進むことができます。不安な点や迷う場面がありましたら、ぜひ私たちにご相談ください。

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